August 20, 2018
きらめく海を眺めつつその海が盛られたひと皿を。
Vol.16 朝ドラのススメ|La Mer the Classic
Text by
Taki Masashi

レーシーなセダンCadillac CTS-Vで
伊勢志摩と聞いて、記憶に新しいのは2016年5月に開催されたG7伊勢志摩サミット。伊勢神宮に降り立ったオバマ大統領が、その後大統領専用車、キャデラックワンで向かったのが、サミットメイン会場となった志摩観光ホテル。そんな由緒正しいリゾートのダイニングで、あるカレーが味わえるという。作家、山崎豊子が小説執筆のために滞在中、脱稿するとオーダーしたとか、とかく伝説的なカレーである。その海の幸カレーをいただきにCadillac CTS-Vで志摩観光ホテルに向かってみた。名古屋以東からなら、渥美半島先端の伊良湖から鳥羽へ、伊勢湾の湾口を約1時間で行き来している伊勢湾フェリーを使うのも一興だ。まあ、過剰なほど速いCTS-Vの走りを少しでもながく楽しみたいオーナーには、余計なアドバイスかもしれないが。

Cadillac史上 〝最強〟 はキャデラックワンかもしれないが(なにしろBeast:野獣が愛称)、Cadillac史上 〝最速〟 はこのCTS-Vに間違いない。6.2ℓ V8 スーパーチャージド直噴エンジンと8AT、マグネティックライドコントロールサスペンションの組み合わせは、本気モードとなれば想像以上にレーシーで、そこが鈴鹿サーキットにも近いことを思い出された。ホテルへと至るパールロードの的矢大橋を駆け抜けながら、これでスズカのS字から逆バンクあたりを目一杯走らせたらさぞかし楽しいだろうと、思わず頰が緩んだほどだ。

志摩観光ホテルは初期に建てられた棟が村野藤吾建築であることでもわかるとおり、オーセンティックなリゾート。ゲストラウンジにリスニングルーム(写真上右)を設けるなどアップトゥデートは怠らないが、そこではゆったりと時間が流れている。そしてそのダイニング『ラ・メール ザ クラシック』をはじめ、ホテルに数あるレストランを統括しているのが樋口宏江総料理長。サミットではワーキングディナーを担当し、食事を終えた各国首脳からテーブルに招かれ、惜しみない賛辞を受けたその人だ。「海の幸カレーは先々代の高橋忠之総料理長がつくられた人気メニュー。いかにその味を継承するかが日々の課題です」と樋口総料理長。純白のコックコートの着こなしが見事で、神職を思わせる凜々しさがある。そういえばここは伊勢神宮も近かったと腑に落ちた、とこれは余談だ。

英虞湾の入り江一望のテーブルでカレーをいただけば、それは南仏、地中海沿いとびきりのレストランでいただく、品のいいブイヤベースのようでもある。ただしスープ・ド・ポワソンほどのアクやクセはなく、ひたすらやさしく上品。だが確かにカレーとしての一線は保たれており、風味にはやすらぎすらあった。シマカン(志摩観光ホテルの愛称)のフレンチといえば、鮑ステーキや伊勢海老クリームスープが有名で、このカレーはその流れを汲むものだ。鮑や海老、蟹がゴロンとあり、海を眺めつついただけば、皿の上にも豊穣で美味なる海がある、という趣向だ。東京からならば6時間、大阪からならば3時間ほどのドライブで、この世界有数にリッチなカレーがサーブされるテーブルにつくことができる。瞬間移動装置的 パフォーマンスを誇るCTS-Vでのパールロードドライブは、実に爽快。それはオーセンティックなリゾートのダイニングでいただく、小さな海のようなカレー同様、実に味わい深いドライブだった。
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CADILLAC CTS-V
キャデラックレーシングのDNAを
受け継ぐ、究極の「V」を冠したセダン。
649PS/6,400rpmを誇るV8 6,156cc
インタークーラー/スーパーチャージャー付エンジンを搭載。
全長×全幅×全高=5,040×1,870×1,465㎜
¥14,750,000(税込)
※「Cadillac PLACE」に掲載されている記事は、取材当時の内容です。お客様がご覧いただいた時点と情報が異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
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