September 27, 2019
地元一頭買いで世界を唸らせるオリーブ牛を
Vol.29 朝ドラのススメ|Steakhouse Ichigo
Text by
Taki Masashi

高級車を熟知したCadillac CT6 プラチナム
ああ、いま香川にいるのだなあ、と思う景色に独特な山のかたちがある。まんが日本昔ばなし風のおむすび型の山が平地からピラミッド的にポコポコ林立する様は、とても長閑だ。海に目を向ければ、日本初の元祖国立公園たる瀬戸内海国立公園が横たわり、そこには岡山県倉敷市とを結ぶ瀬戸大橋が架かっている。香川県は全国47都道府県の中で最も狭い(なにしろ岐阜県高山市よりも狭い)のだが、山あり海ありうどんありと、実に魅力に富んでいる。そんな香川をキャデラックCT6で訪ねてみた。高級車ブランド一筋に117年、ラグジュアリーカーのなんたるかを熟知するフラッグシップサルーンで海を渡れば、景色が一変。海の青、山の緑に誘われ、窓を開ければ水の香を含んだ涼風が頬を撫でていく。

香川を訪ねたのは、高松に凄いステーキハウスがあると聞いたからだ。オーナーシェフが凄腕のオリーブ牛専門店で、その名は地元でよりも都市圏、ひいては欧米で知られているとのこと。聞き慣れない「オリーブ牛」というのも実に気になるなぁ、とCT6のステアリングを握り噂の『ステーキハウス 一牛(いちご)』に。店はJR高松駅から南へ5kmほど、高松自動車道の高松中央ICと高松檀紙(だんし)ICの間の塩江(しおのえ)街道沿い。進学塾や美容室、駐車場付きのコンビニなどが並ぶ郊外宅地の一角で、建物自体はオーラを放っていない。ところが、そこには偉大なる牛肉マエストロがいた。

マエストロの名は森 由樹博(写真 左下)。関西屈指のステーキハウスで修業を積み、独立。牛肉にのめり込む日々を送り、ある日オリーブ牛と出会う。「名だたるブランド和牛と食べ比べて、一番美味しかったんです。僕も知らなかったので『オリーブ牛って何処の牛なの?』って聞いたら、自分の地元の香川産でした。で、香川に帰ってオリーブ牛を食べられる店を探したら無い。調べたらいい血統のオリーブ牛は関西圏の引き合いが非常に強く、そのほとんどが神戸に出荷されていました」と、森さん。

ならば最高のオリーブ牛を味わえる店を高松につくろう、と森さんが奮起したのは3年前。意を決し、ほぼ1カ月後には店を立ち上げた。今ではオリーブ牛を育てる畜産家とパイプも築き仕入れは基本、一頭買い。焼肉店ならまだしもステーキハウスで一頭買いだとステーキ部位以外余るのでは? と聞けば、ハンバーグにしたりソースに煮込だりと、ノウハウを確立したとのこと。「コストで考えれば確かに合いません。でも牛の登記(個体情報)がついてきて、何を食べ育ったかまでわかるメリットの方が大きいです」と森さんは真摯だ。スペイン、イタリア、フランス、そして米N.Y.、L.A.からの来訪が多いという訪日客はエサや投薬まで気にするが、一頭買いならば明快に答えられる。それもあってだろう、高松郊外というロケーションながら口コミでその数は増え続けている。

その日いただいたのは厳選ヘレ定食(150g 8500円)。火の入れ方が完璧で、口の中で広がった脂がスッと一瞬で消えていく。オリーブ牛の名は伊達ではなく、オリーブを食べることによって脂質のオレイン酸が増え上質なオリーブオイル同様、脂のキレが良くなる。口に脂がまとわりつかず、残らない。そして『一牛』には『一牛神(いちごかん)』という会員完全予約制の離れがあり、こちらでは解体後一週間以内のフレッシュミートもいただける。完全会員制とはいえHPから簡単に会員申込できることもつけ加えておこう。

冒頭でも触れたがキャデラックと高級車はイコールであり、その117年の歴史はラグジュアリーカーの歴史とイコールである。それゆえのくつろぎがCT6にはある。極上リゾートのリビングで、素晴らしい景色を眺めながら掛け心地のいいソファで過ごす時のように、そのキャビンにいるだけで満ち足りた気分にしてくれる。

居るだけで、とはいえ実際には様々に仕組まれた「もてなし」が作用しているのだが、そうは感じさせないところが、キャデラックだ。例えばスマホのアプリから、すぐに鳴らすことの出来るオーディオは、BOSEのハイラインたるPANARAY(パナレイ)のそれで、34ものハイパフォーマンススピーカーをCT6専用にセッティングされたもの。圧縮率の高いMP3音源でも的確な処理で驚くほどの音場を生み出す。CT6のキャビンは移動しつつ集中して聴きこむことのできる理想のリスニングルームでもある。

さらにリアシートには、左右前席ヘッドレスト後部に仕込まれた10インチモニターと、ふたつのヘッドフォンも用意されていて、手持ちのデバイスをUSBもしくはHDMIポートで繋げ、映像コンテンツも気軽に楽しめる。PANARAY のロゴが刻まれたスピーカーパネルのちょっとクラシックな佇まいは、オーセンティックなCT6のキャビンによく馴染んでいる。これみよがしでなくとてもシックだ。第一線であり続け、リブランドなど一切なく、いまだ進化の過程にある類まれな高級車の伝統が、そんなところにもうかがえた。
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CADILLAC CT6 SEDAN
キャデラックの最上級セダン。
フルサイズアメリカンSUV。
全長5,230×全幅1,885×全高1,495mmのボディにV6 3,649ccエンジンを搭載。10ATと全輪駆動が組み合わされている。
¥10,260,000(税込)
※「Cadillac PLACE」に掲載されている記事は、取材当時の内容です。お客様がご覧いただいた時点と情報が異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
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